毛鹿母の家
岐阜県・住宅・木造

集落に慣れ親しんだ外観を変えない
都心で生活をしてきた夫婦が、恵那の山奥の古民家を購入し、子育ての場所に田舎暮らしを選びました。
建物外観
母屋は築100年以上経っており、典型的な農家です。かつては、田の字型プランで土間にはかまどがあり、馬屋もあったように伺えます。現在は、増改築を繰り返し、母屋と土蔵は一続きになり、周りには池、離れ、小屋、駐車場が配置されていました。これらの外観は、現代の農家民家そのものであり、集落に溶け込んでいました。
集落に慣れ親しんだ外観を変えない
日本家屋でありたい、残せるところは残したいという施主の要望があり、また、集落に慣れ親しんだ建物を残すため、外観は極力変えないよう努めました。

温熱環境とプラン
既存は無断熱の建物でした。施主は、完璧な温熱環境を求めてはおらず、まずは、どこまで快適を犠牲にできるのか、ギリギリの性能は何かを話合いました。 外観を残すため、内断熱を採用し、他の字プランの大らかな空間に戻すこととしました。
大らかな空間と温熱環境を成り立たせるため、空間にメリハリをつけます。
生活や環境の緩衝帯(バッファゾーン)をを設け、外、内、内外、外内など段階的に、自由な交流ができる空間としました。
母屋はひとつの大空間とし、襖によって仕切られることで大空間は小さくもなります。水廻りは現代の性能をもたせるため、当初より小空間としました。 また、土間には薪ストーブを置き、土間を蓄熱させることで、冬場の快適性を上げます。

外観を残すための装置
既設のアルミサッシはシングルガラスですが、外観を残すためそのままを選択しました。断熱性は、カーテンを利用することで上げます。冬場、窓からの冷気は下に流れますが、床に溝を付けることで冷気が流れるのを防いでいます。この装置は景色を切り取る役目もあり、庭を通して棚田の田舎風景が眺められます。
南北の風の流れ
既設縁側の天井を撤去し、和室の天井裏を通じて南北に風が流れるようにします。
和室の襖を閉じていても風が抜けるため、夏はエアコン要らずで、四季を感じながらの生活ができます。
建物強度は元にもどす
まずは増築建物を撤去し、母屋の原型をあらわします。残された母屋は、過去の増改築により、柱、梁が撤去されていたので、極力オリジナルの架構に戻します。腐っていた部材もあったため、補修をしました。構造部材を繕った跡はあえて目に見て分かようにしています。 古い瓦は外観の主役であるため、既設を葺き替える選択をしました。現代の強度には届きませんが、瓦に穴を空けワイヤーを通して固定するなど、職人が気を使って葺き替えました。
伝統的なデザインと自分らしい生活
古民家に住むためには、環境性能、耐震補強などさまざまな難問があります。それをどこまで改善することで快適とするのか、それは住人による意思になります。毛鹿母の家は、施主にとって自分らしい生活ができる家となりました。


ダイニングから蔵を見る

開放的な日本の住宅

外観は集落の景観

100年の痕跡を探る

古い土壁
敷土を下ろすことで地震にも体力アップとなります。

美しい集落



